相続人は、被相続人の未払い債務について時効援用ができます。ただし、まずは3カ月の熟慮期間内に相続放棄・限定承認・単純承認のいずれかを判断する必要があります。単純承認をしても、時効要件を満たす債務であれば相続人として援用可能です。債務調査は郵便物・通帳・信用情報開示・役所照会の4ルートで行います。
1. 相続財産は「プラス」だけでなく「マイナス」も
相続が発生すると、プラスの財産(預貯金・不動産・有価証券等)だけでなく、マイナスの財産(借金・未払税金・保証債務)もすべて相続人が承継します。「うちには財産がないから相続は関係ない」と考えていると、気づいたときには巨額の負債を承継している、ということが実際に起こります。
事業を営んでいた被相続人の場合は特にこのリスクが高く、廃業(相続放棄)か、事業承継(全部相続)か、一部承継(限定承認)かを早期に判断する必要があります。

2. まずは債務調査
判断材料としての債務調査は、次の4ルートで進めます。
- 郵便物・保管物の確認(契約書・督促状・通知書)
- 通帳・クレジット明細の確認(定期引落・振込履歴)
- 信用情報機関への開示請求(CIC・JICC・KSC)
- 役所への照会(市税・国保等の滞納)
個人間の貸し借りは書面や通帳がないと把握しきれません。熟慮期間(3カ月)が足りない場合は、家庭裁判所に伸長の申立をすることで期間を延ばせます。
3. 3つの選択肢
相続人は、相続を知った時から3カ月以内に次の3つのいずれかを選びます。
- 相続放棄:プラスもマイナスも全く受け継がない
- 限定承認:プラスの範囲内でマイナスを清算(相続人全員で共同)
- 単純承認:全部を受け継ぐ(何もしないとこれ扱い)
明らかに債務超過なら相続放棄、判断がつかない場合は限定承認、事業承継したいなら単純承認、というのが一般論です。
4. 単純承認後でも援用できる
単純承認した場合でも、被相続人が生前に負っていた債務のうち、時効期間を満了し更新事由のないものは、相続人が援用できます。被相続人の最終取引日が5年以上前で、その間に誰も支払っていない場合は、援用の対象となります。
相続人が知らないうちに被相続人が一部弁済していた場合は、その時点から時効期間が再スタートしている点に注意してください。
5. 当センターでの対応
当センターでは、相続人のお一人(法定相続分の範囲)からのご依頼で援用通知書を作成します。相続放棄・限定承認をご希望の場合は、家庭裁判所への申立てが必要で、これは弁護士または司法書士の業務領域となります。
債務調査の委任を受けた行政書士として、信用情報機関への開示請求代行も対応可能です。
この記事に関するよくある質問
Q1. 相続放棄してしまったら援用できませんか?
相続放棄すれば債務者ではなくなるため、援用は不要です。債権者の請求には相続放棄申述受理証明書で対応します。
Q2. 3カ月を過ぎてから借金が見つかったらどうすればよいですか?
知った時から3カ月以内であれば相続放棄できる場合があります。すぐに家庭裁判所に相談してください。
Q3. 相続人が複数いる場合、誰が援用すればよいですか?
各相続人が自分の法定相続分について援用できます。共同相続人全員での手続きは必須ではありません。
Q4. 被相続人の携帯料金も援用できますか?
可能です。相続人として、契約名義人に代わって援用通知を出せます。
Q5. 税金の滞納も時効になりますか?
税金には別の時効ルール(地方税法・国税通則法)があります。民事債権とは期間・手続が異なりますので、個別にご相談ください。