引越し後に古い住所へ届いた裁判書類が公示送達扱いとなり、本人の知らないうちに債務名義(確定判決・仮執行宣言付支払督促)が成立しているケースがあります。該当すると時効期間が5年から10年に延び、援用が封じられます。引越しされた方は、信用情報開示書で「債務名義取得」表示がないかを確認するのが先決です。
1. 住民票を移さないリスク
引越ししても住民票を移していない方は実務で多く、実家宛てに届いた書類を親が処分したり、同居人が受け取ったけれど本人に渡っていなかったりするケースが頻発します。債権回収会社は住民票上の住所を調査して裁判書類を送るため、古い住所が住民票のままだとそこに届きます。
裁判所の書面は特別送達という方式で届き、受取不在が続くと「公示送達」「付郵便送達」という手続で送達扱いになります。受け取っていないのに法律上は届いたことになる──これが債務名義成立の温床です。

2. 公示送達と付郵便送達
公示送達は、裁判所の掲示板に一定期間掲示することで送達の効力が発生する制度です(民訴法110条)。本人が確実に知る機会はありません。
付郵便送達は、居所はわかっているものの受取人が不在を続ける場合に、裁判所書記官が書留郵便で発送すれば送達とみなす制度です(民訴法107条)。こちらも本人の受領を要しません。
いずれの場合でも、本人に書類が届いていなくても、法律上は債務名義が成立してしまいます。
3. 自分が対象か確認する方法
次の手順で確認できます。
- 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に開示請求。「債務名義取得」「強制執行」の表示がないか確認
- 現住所地の簡易裁判所・地方裁判所に事件検索の照会(本人名での事件有無)
- 旧住所の家族・同居人に、届いた書類がなかったか確認
債務名義がない場合は、従来通り5年時効援用の対象です。債務名義があれば10年時効に切り替わります。
4. 督促が新住所に届いた場合
新住所に移ってから督促が届いた場合は、債権者側が住民票または関連情報から新住所を把握したということです。急ぎ電子内容証明で援用通知を発送し、裁判手続に先んじて意思表示を確定させます。
電話は出ない、一部弁済しない、書面対応のみ──という原則はここでも同じです。
5. 住所変更は今すぐ
まだ住民票を移していない方は、まず住民票の届出を行ってください。裁判書類の送達先が現住所になれば、以降は本人が気づかないまま債務名義を取られるリスクがなくなります。
当センターでは、引越し経験者の方について、信用情報開示のアドバイスと援用通知書の作成をセットでご提供しています。
この記事に関するよくある質問
Q1. 住民票を移していないと援用できませんか?
援用自体は可能です。ただし旧住所で裁判書類が公示送達されていないか確認する必要があります。
Q2. 「債務名義取得」の表示はどこで見られますか?
CIC・JICC・KSCの開示書面の「入金状況」「契約情報」欄にコード表示されます。見方は各機関の凡例を参照してください。
Q3. 公示送達を後から争えますか?
再審・執行異議で争える余地がありますが、弁護士の検討が必要な領域です。当センターでは弁護士をご紹介します。
Q4. 親から「訴状らしい書類が届いていた」と伝えられました。
至急、裁判所への事件照会と弁護士相談をお勧めします。期限を過ぎると確定します。
Q5. 新住所に通知が届いたらまず何をすべきですか?
電話で連絡せず、内容を撮影して当センターまでお送りください。ヒアリング後に援用の可否を判断します。